2021年1月15日金曜日

内浜好齢大学

 1月15日(金)

「新型コロナウイルス感染症に関する人権問題」
無知の恐ろしさを通じて学ぶこと
 
講師
河原 行孝さん(人権教育推進員)

最初に伝えたいことは、感染症に対して知らないことが差別を生むということです。新型コロナウイルスという未経験の脅威であるわけですが、正しく知っていれば、ここまで拡大することは防げたのではないか。ウイルスは細菌よりもはるかに小さく、変異は格段に起こりやすい。同じコロナウイルスの「サーズ」「マーズ」よりも、厄介な特徴を持って変異したために、今回のような感染拡大になったわけです。
 WHOの発表では、世界中で感染者9000万人、死者195万人。現在も増加中です。「新型」は潜伏期間が5日程度と長く、知らずに他人にうつしてしまいます。高齢者や基礎疾患のある人は重症化して死亡する例が多かったのですが、若者の中には感染しても全く発病しない者もいたし、重症化せずに治っていったため、危機感が少なく、危機感に世代間に大きな差が生じました。
 今回、国としては「3密を避けて」と呼びかけ、外出禁止要請、学校の休校措置、営業自粛要請を行っています。世界の多くの国は「外出禁止令」など強制措置が取られましたが、個人の判断・行動で「国などの要請をよく守っていた」、諸外国に比べて感染者や死者の割合が少ないと評価されています。それでも様々な人権問題が発生しました。その原因は、①初めて遭遇したともいえる新しい脅威だったこと、②経済的困窮の状況におかれたこと、③行動制限が長く続き、不自由な生活を強いられたストレスも大きかったと思います。
 
 日本赤十字社の「新型コロナウイルス感染症対策本部」は、①未知なウイルスで分からないことが多いために、不安が生まれ、②ウイルス感染にかかわる人を遠ざけるようになり、③差別を受けるのが怖くて熱や咳があっても受診をためらい、結果として、病気の拡散を招くことになっていると指摘しています。この“感染症”の怖さは、病気が不安を呼び、不安が差別を生み、差別が更なる病気の拡散につながっていることなのです。
 感染しても分からない期間が長いという特別なウイルスだったわけで、意図せずに感染を広げているケースがほとんどだったことから、我々がすべきことは、①マスクの着用・手洗いとアルコール消毒など感染予防に努めること。②発熱や咳がない無症状でも、味覚・嗅覚の異常という感染を疑うケースがあることを活かすこと。③感染防止のために、感染者が出た施設を公表しているのに非難の眼で見ないこと。と思います。
 名前や写真がネット上を飛び交った山梨県での20代女性の感染後は、県の調査や情報公表を拒む人も出ました。「患者が正直に感染を申告できない弊害は、社会全体に返ってくる」と危惧されています。
  まだまだ出口は見えませんが、「新型コロナウイルスによる死者数が8万人を超えたイタリア、新聞紙上に連日、亡くなった人々を追悼する特集面が掲載された。著名人だけではなく、一般市民も実名で幅広く取り上げられた。感染者を差別しない国民意識が背景にあるようだ。」という事例を紹介して講座は終わりました。