2月20日(土)
今回の講師は吉岡綾さん。福岡市内の同和地区に生まれ育ち、部落差別を身をもって体験したことを通して、今コロナ禍の下で感じていること、思っていることを語っていただきました。
綾さんは、小学校5年生の時に母親から自分の住んでいるムラを同和地区と知らされ、「部落差別をなくそうと勉強しているとよ」と言われても、意味が分からなかったとのこと。小中学校の授業で、身分制度を強化するために部落はできたと習うごとに疑問は増します。差別の悲惨さ、つらさを聞いて、「友達はどう思っとっと?」「道路一本違うだけで、どんなちがいがあるっちゃろ?」と。その結果、ムラに生まれたことを恥じと思い、外に引っ越せばいいと思うようになった。結婚して本籍地を変えたいとも思った。(以前の運転免許証には本籍地が記載されていた)飲み会などで隣の席の人と話す時、決まって聞かれるのが「どこの出身?」より親しくなろうとするのでしょうが、それを聞かれるのがつらかったとも。
タクシーに乗車拒否をされたり、以前の婚約者の家で父親や本人の心無い部落差別の言葉を聞き、何も言えずに涙したことを経て、20歳の時に今の「つれあい」と出会います。付き合い始めて半年後ぐらいの時「自分は部落の出身でね…」とカミングアウトしたところ、彼の最初の反応は「部落ってなん?」、思わず私は「部落ってなんってなん?」と問い返します。彼も小中学校で部落問題についての学習はしているはずなのに、部落という言葉自体が記憶されていないことに驚きました。
彼を農家の私の実家に連れて行ったり、彼の友達からは「部落の女とは別れた方がいい」と言われながらも部落のことを知ろうとした彼。何度か会っていた彼の両親に思い切って「私は…」とカミングアウトした時、お父さんが「1ケ月前に息子から聞いて知っとった。何でもっと早う言わんかったのか!きつかったやろ!」と言われ涙がとまらなかった。
私は多くの出会いの中で、あったかい人がたくさんいると知りました。私は「差別があって誰が得するんだろう?」と思うんです。差別をした人は得しているんでしょうか。コロナ禍の中で、自分の子どもを守るためとはいえ他者を排除する保護者の話を聞きますが、部落があるから差別されているのじゃなくて、差別する人がいるから差別があります。人は知らないから差別をします。きちんと知って認識しなければ、偏見と差別の連鎖を断ち切ることはできません。とお話されました。
【参加者の感想】
〇体験談を通して、自分の姿を見ることができました。子どもの時からの人権教育の必要性を感じますので、その取り組み方を学んでみたい。
〇ご自分の辛い体験を、とても解りやすく聞かせていただきました。今日、話を聞け良かったです。
〇現在最も関心の高いコロナの発生に関連させての差別の存在がとても解りやすかった。自分と家族を守ろうとすることが差別に通じるとの考えが及ぶだろうかと反省もした。
〇貴重な体験談が聞けて良かったです。アンケートの(男女の)性別記入は必要ですか?
〇副会長の(まとめの)コメントがリアルな響きがあってgoodでした。
〇差別体験が身近であっているので怖かったです。
〇私の転機の部分(の話)が良かったです。
〇私自身市内中央区出身なんですけれど、子供のころは意味がわからなかったです。大人になってわかるようになりました。人間性作るのは家庭に有り。育ちが大事です。すべて親ですね。ためになりました。
〇今までフタをして避けて通っていた事ですが、ここまで真剣に話を聞いたのは初めてでした。損をするのは差別をする方。しっかりと肝に命じたいと思います。