2022年1月31日月曜日

人権講座

1月29日(土)

「同和問題」
~部落差別の現状とこれからの取り組み~

講師
河原 行孝さん
(人権教育推進員)

 同和問題の講師には被差別部落の方であることがよくあるでしょうが、私は自分が被差別部落出身であるかどうかはわかりません。これからもわからないでしょう。なぜなら、調べてもいないし、今後も調べないからです。その理由は「どちらでも構わないから」
 皆さんの部落差別との「出会い」は、どうだったでしょうか。学校や家庭で出会われたことでしょうが、学校教育で部落差別を習ったかどうかは、地域差と年齢差が大きい。早くから取り組んでいるのは福岡県や関西です。私が初めて同和問題を習ったのは、大学の教員免許取得のための必修科目にあったためで、教員免許を取得してなかったら学生時代に習うことはなかった。家庭で部落という言葉を初めて聞いた時は、プラスイメージだったでしょうか?私が、初めて親から直接聞いたのは、40歳すぎてからでした。高校教師になって直面したのは、ある県立高校の生徒がグループで作ったロックバンドに賤称語を名づけ、入場券を売り、演奏会を計画したということがあり、学校教育が厳しく批判されました。
 私は、同和教育推進教員として人権教育を推進し、部落解放の歴史に学び、あらゆる差別を無くしていこうと伝えてきました。部落差別をなくす闘いが勝ち取ってきたものには、義務教育の教科書無償、外国人登録証の指紋押捺撤廃、就職時の応募用紙の統一、九州の同和教育の先駆者である林 力先生が中心となって取り組んできたハンセン病の方々への補償等があります。
 最近のニュース(2021923日の報道)に、福岡県の通信制高校のサポート校で、入学願書に家族の職業などの記入を求める不適切な項目があったということがありました。進学や就職は親の職業等に関係なく本人の能力と適正だけを見て選んでほしいと、部落差別の中の就職差別を無くす取り組みから、すべての生徒の進路を保障する取り組みへと受け継がれているのです。
 ある市での令和2年「男女共同参画社会に関する意識調査」の自由記述欄の中に気になるものがありました。
 「〇〇校区の最大の問題は、同和地区の開放運動がいまだに盛んなことだと思います。これだけの世帯が家を建てたり、引っ越して来ているのに、まだ差別があると思われているのでしょうか?同和地区だからではなく、いまだに差別があるという考え方の地域だということが、とても嫌で恥ずかしいです。…」
 この記述の問題点は、部落差別がいまだに無くなっていないのに、部落差別の現状が見えなくなっている、忘れ去られている、ということです。「部落解放運動」は、長い年月を経て様々な差別からの解放のために大きな役割を果たしてきたという事実を、今後も伝えていきたい。